ハンガリーが生んだ天才ピアニスト三羽がらすの筆頭にあげられていたのが今日がお誕生日のラーンキです。
1951年生まれのラーンキ,そしてコチシュ,シフと同世代のハンガリーのピアニストが世界中のピアノファンを魅了したのは1970年代。10年に一人の逸材が同時期に3人も出ててきたのですから,ハンガリーのピアノ教育も注目を集めました。
3人とも同門でありながら,それぞれ個性が際立っていました。ラーンキは映画俳優なみの容姿でもあり,日本ではもうクラシック界とは縁遠い騒がれ方をしていました。まさにアイドルです
私は何度かリサイタルやオーケストラとの共演を聞きに行きましたが,本当に素晴らしいピアニストで,容姿端麗すぎることがピアニストとしての評価を曇らせはしないかと心配したものです。
ラーンキの演奏の中で大好きなのはショパンのエチュード作品10,シューベルト21番のソナタ,モーツァルトのソナタ,リストのソナタ,メフィストワルツ,ベートーベンのワルトシュタインソナタ,バルトークのピアノ協奏曲3番・・・きりがありません。
超絶技巧の曲でも決して技巧が前面に出ることなく音がやさしい。真珠の玉のようです。派手派手しくなく,いつもみずみずしい感性の演奏と言いますか,どの曲の演奏も大好きでした。モーツアルトのピアノソナタの連弾曲でいっしょに弾いていたコチシュは後年指揮者として大活躍でしたが,早くに亡くなりました。二人の青年のころのモーツァルトの共演,ほんとうに息がぴったりで,美しく気高いラーンキといたずらっ子のようなアプローチを仕掛けてくるコチシュのコンビ,もう二度と聞けません。
ラーンキは今日で71歳です。でも私の中では永遠に少年の面影を残した青年ピアニストです。