ヴァン・クライバーン国際ピアノコンクールで私が注目していた3人のピアニストはセミファイナルで亀井聖矢さんだけになってしまいました。前々回のショパン国際ピアノコンクール3位入賞のケイト・リウさんは,セミファイナルに進むことはできませんでした。前回のチャイコフスキー国際コンクールに入賞したアンさんも姿を消しました。
それにしても亀井聖矢さん,絶好調ですね。そしてセミファイナルでとんでもない逸材を聴いてしましました。韓国の最年少コンテスタント,若干18歳のイム・ユンチャンさんです。
セミファイナルでは1時間のリサイタルをするのですが,コンテスタントたちはいろいろな曲で1時間を構成します。亀井さんはベートーベンのワルトシュタインソナタ,リストのラ・カンパネラ,ラヴェルの夜のガスパール,バレキレフのイスラメイ。古典,ロマン派,近代と幅広い緩急付けた選曲ですね。
ところがイム・ユンチャンの選曲を見て驚きました。何と、リストの12の超絶技巧練習曲集です!1曲だけでも大変な難曲なのに12曲全部コンプリートか!
演奏はすさまじいものでした。鬼気迫るというか,地獄の閻魔様も口をつむぐというか,ものすごい気迫の演奏で,圧倒されました。12曲最後まで疲れを知らず,人間離れした演奏でした。クライバーンコンクールの聴衆は他のコンクールと比べてのりがよい反応で,陽気なスタンディングオベーションやら歓声やら。しかし,この時の演奏はいつもの聴衆ののりではなく,気圧されたというか魂を抜かれたというかそんな印象を受けました。
もしかしたらとんでもないシンデレラボーイの出現かもしれません。
イム・ユンチャンのCD(Amazon ミュージック)
リストの超絶技巧練習曲集(大好きなアリス・紗良・オットーさんの演奏)