先日,角野隼人さんのニューヨークでのピアノ演奏を特集した番組がありました。角野さんはピティナでグランプリを獲得し,ショパンコンクールでもセミファイナルまで進出するという,クラシック音楽での活躍はだれもが知るとおりです。コンサートも満場ですね。
ニューヨークでは日本とは全く違った環境で,クラシックに限らずいろんなミュージシャンと即興的にセッションする様子に,クラシックという枠にとらわれない自由闊達な音楽という持ち味が披露されていました。
この番組の中で,角野さんが尊敬しているピアニストに会いに行く場面がありました。それが,エマニュエル アックスさんです。
実は何十年も前,地元でエマニュエル アックスさんのショパンを聴いたことがあります。バラード3番ですが,音一粒一粒がやわらかくて,あたたかくて,どうしてこんな音色が出せるんだろうと心に残りました。
私が聴いたのは演奏会ではなく,公開レッスンでした。ショパンのエチュードやバラードなど,受講生が演奏するのに対して,決して,否定しないでアドバイスをする。このときバラード1番を弾いた受講生が,かなりクセのある弾き方で,普通の先生なら「楽譜に忠実に」と言いたくなるところを,「おもしろい」とまず受け入れた上でアドバイスをされている姿勢に人間の器の大きさ,深さを感じました。
角野さんもアックスさんにアドバイスを求めたのですが,「今やっていることを続けたらいい」と角野さんの演奏を褒めた上で話されていました。そのやりとりに何十年も前の公開レッスンのアックスさんの姿が重なりました。
アックスさんの生のピアノ,また聴いてみたいです。