子どもの頃,夜にピアノを練習していると,近所から苦情がきました。それをきっかけにピアノの音を外に漏らさないようにものすごく気を遣いました。カーテンを二重にする。ピアノの背面に毛布を巻く。そんなにしても音はどうしても漏れてしまいます。思い切り練習できない。それはストレスにもなりました。防音室がなければ田んぼの中の一軒家でもない限り,思いっきり弾くことはできないのか。学校の音楽室や大学の練習室でしか思い切り弾くことはできませんでした。
おとなになってフルタイムで働くようになるともっと練習時間が取れなくなりました。
家事育児が大変な時期は,自分の時間が取れるのは夜の9時以降。そんな時間からピアノを練習することはできません。そんなとき,いつもきていただいている調律師さんから後付けできる消音ユニットの話を聞きました。今から20年以上の前で,アコースティックピアノ用の消音ユニットの出始めの頃です。すぐにお願いしました。取り付けは専門的なことは分かりませんが,二人の調律師さんがきて,一日がかりの大仕事でした。ピアノの鍵盤の下に消音ユニットのレバーがあり,その操作でアコースティックピアノ,サイレントピアノと切り替えることができ,ヘッドフォンを付ければ真夜中でも練習ができるようになりました。ものすごく画期的な発明ですね。
消音ユニットを付けたという話をすると,電子ピアノを買ったのかと誤解されることがあります。電子ピアノは全く別物。鍵盤の深さやタッチ,音色など全く違う楽器です。
何十年と使っているうちに,不具合が出てきました。同じようなタッチでもものすごく大きく鳴る音が出てきたのです。調節してもらってもすぐ元に戻ります。
そこで3年前,新しい消音ユニットを取り付けてもらいました。初期のシステムと違って鍵盤の下に光センサーが付いて反応するので,前回のような不具合は起こらないそうです。お値段は16万円ほどでしたが,私にとっては必要な出費でした。
このころ内輪のコンサートで(といっても50人くらいの方が来てくださいました)ショパンのバラード4番を弾くことになっていました。この曲は難曲で,生半可な練習では太刀打ちできない。夜,消音モードで何時間も練習し,無事弾き終わることができました。
住宅事情でピアノをアコースティックか電子ピアノか迷っておられる方がいらっしゃったら,アコースティックピアノに消音ユニットを付けたタイプをおすすめします。ピアノをどの程度やりたいかにも寄りますが,少なくとも先生について系統的に習いたいのならアコースティックピアノの方がおすすめです。なぜなら,ピアノは打鍵すれば音は出ますが,タッチに思いを込めて音色を作っていくのが電子ピアノにはないピアノ演奏だと思うからです。指の角度,打鍵の深さ,打鍵の速さ,指のどの部分を使うか,指先に体のどの部分から重みをかけるか,いろ一つの音色を作ります。その醍醐味はやはりアコースティックピアノの領域だと思うからです。
以下にご紹介する消音ユニットは音源が何とファツィオリです。昨年のショパン国際ピアノコンクールでもスタインウェイと並んで公式ピアノとして使用され,優勝したブルース・リウさんもファツィオリを選んで演奏されていました。消音モードにしたらヘッドフォンからファツィオリの音色で練習できるなんてわくわくしませんか?
【出張費&取り付け費用込み!】アップライトピアノ用 消音ユニット Piano Silencer Classic V2
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