「ブラック企業」「社畜」など,最近よく耳にするようになりました。労働者が当たり前の生活や権利を踏み潰されてまでも,まじめに仕事をし続けて最近,「これはおかしい。」という水面下に押しやられていた気付きがやっと表面化したのでしょう。
私は大学の時,今の職に就くための資格の勉強をがんばりました。受験対策として問題集も買い,通信教育もやりました。大学でも試験に通るため,特別に補修もしてくださいました。そうやって採用試験に合格し,卒業と同時に今の職業に就きました。
まっさらの新人時代,職場で言われることが全てで,「疑う」という思考回路が全くありませんでした。今考えれば理不尽なことが山のようにありました。でも,そんなものだろうとしか考えられませんでした。
1勤務時間はあってないもの
一応勤務時間というのは決まっていましたが,かなり早く出て遅く帰るのが当たり前でした。勤務時間の前や後に会議や打ち合わせ,作業が入ることは日常茶飯事でした。
2休憩・休息時間はあってないもの
これも同じです。だいたい食事は15分も掛けられたらいい方。そんな感じでした。
3土日に出ることもある
普段の業務がその日のうちに終わらないため、自転車操業。なので,土日に出勤して帳尻を合わせることもざら。もちろん,土日については「勝手に出勤したのだから」手当も振り替えの休みも取ることはできません。土日にでられない人は持ち帰り仕事です。家族との時間などぜいたくなもの。
4宿泊を伴う仕事では本来の勤務時間の後にも業務は続く
建前では夕方5時が仕事終わりだとしても宿泊を伴う仕事では,その業務が夜10時まで続くこともあります。でも,ふり返りの休みはありませんでした。(現在は少し改善されたようです。)
5多すぎる仕事量 残業しても残業代は出ない
1日8時間の勤務時間しかないのに仕事量はそれではまかないきれない。定時に帰るのは無理。みなさん残業が当たり前。でも,働いた時間に対する手当は出ません。一人一人の「やりがい」と「ボランティア精神」と「仕事への誇り」にのっかって,労働の搾取です。みなさん,大学時代にがんばって勉強して試験に通ってしごとをしているので,なかなか言えないという心理状況です。言えば自分の今までの努力を自己否定するようなへんなバイアスがかかっていたのかも。せめて労働に対する正当な対価を得るという健全な考え方がどの職場でも当たり前になってほしい。
私は新卒のときから定年退職するまでずっとこの仕事をしていました。お金をもらう仕事ならどんな仕事でも苦しいことはある。というのが戦中派の両親の教えでしたから,疑いを挟むこともありませんでした。
最近になって「ブラック」「社畜」という言葉が聞かれるようになり,「あれ,もしかしたら?」と考えたら,やはり私の仕事はブラックとしか言い様がありません。疑いもなく長年働いていると,「おかしい」ことを「おかしい」と感じる思考回路が麻痺していくのですね。これ,戦争に突き進む国でいつの間にか国のトップに思考回路を洗脳され,戦争に疑問を挟むことを失ってしまうことと似ています。
今も定年退職しても再雇用で同じ職場で働いています。給料は大幅にカットされましたが,年金支給はまだ先なので残ることにしました。そんなにブラックなら転職をすればと言う意見もあるでしょうが,定年退職後の転職は実際過酷です。今までのノウハウを使える仕事として残ることにしました。去るも地獄・残るも地獄なら,残る方がいいかも。
救いはあります。同僚との関係がとてもいいことです。苦しみや不満を共感し会える仲間がいることは,本当に大切なことです。悪い上司がいるわけではない。悪いのはこの仕事のシステムです。
読んでくださってありがとうございます。こんな仕事は何?と思われたかも知れませんが,ここではあえて具体的な仕事の名前は明かしません。ご推察にお任せします。