前から見たかった「ベートーベン捏造」をやっと見に行けました。
席はほぼ埋まっています。ドラマで人気の脚本家のバカリズムさんが脚本ということで注目度も高いのかな。
ドラマの会話のテンポややり取りがおもしろいバカリズムさんのテイストとは違った映画でした。日本人キャストがその当時の服装で外国人名でウィーンという外国の地で演じるという不思議な設定ですが、見ているとなぜか馴染んでいました。.
私は学生時代ピアノを専攻していたので、ベートーベンのピアノ曲はかなり弾きました。テンペストのエピソードはもちろん知っていますし,映画の中のピアノソナタは大体弾いたことがあります。でも,秘書のシンドラーの目から見たベートーベンというのは,ピアノ作品は知っていてもその人物像は全然思いも寄らないもので,とても新鮮でした。何となくきいたことがあるベートーベンのエピソードは実は後からつくられた物かどうか,今まで考えたこともないわけで,迷宮に入り込んだかのようでした。
この映画の主人公はベートーベンでなくシンドラーで,シンドラーの書いた伝記があるから真偽はともかくベートーベンはカリスマ性があり,人を引きつけるのかもしれません。
子どものころ聞いた話です。モーツァルトは天才で、天上から音楽が降ってきてそれを書き留めているようなもの,だから楽譜に推敲の跡があまりない。ベートーベンは努力型で、数小節の音楽をものすごくあれこれ考えて書くので楽譜は推敲の跡だらけ。日本人は国民性が勤勉努力型なので,ベートーベンに共感するのだろう。
私が若いころはベートーベンの曲はあまり好きではなかったです。弾いてても心からワクワクしたり美しさに陶酔するということもありませんでした。若いころはショパンやシューマンのような叙情的で美しくロマンチックな曲が好きでした。歳を取るとだんだん嗜好が変わってきて、ベートーベンがだんだん好きになりました。だから若いころからベートーベンの音楽に夢中になっている人はすごいなあと思ってしまいます。
この映画の最後に清塚信也さんの「熱情」第3楽章が流れます。いわゆるクラッシックの弾き方とは少し趣が違い,とてもエモーショナルな演奏だと感じました。全身全霊で尽くすのに報われないシンドラーに寄り添うかのような,切なさと優しさあふれる熱情でした。
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