私の大学卒業時の演奏です。かれこれ40年前になります。当時はカセットテープで録音していました。フランスの印象派モーリス・ラヴェルの組曲「鏡」より3曲を演奏しましたが,その中の1曲です。
「悲しい鳥」という題名はとてもふしぎです。そもそも鳥にうれしい・悲しいなどの喜怒哀楽があるのかという突っ込みどころ満載です。でも,この曲を聴くと必然的に「悲しい」しかないなと思えてくるのです。鳥の鳴き声を表現したような音のつながりが次々出てきますが,その中に明るさはない。ひたすら暗く陰鬱な感じがします。ところどころ怪鳥がけたたましくあざ笑っているかのようなフレーズも聞こえてきます。
鳥に関連した曲では「かっこう」が有名ですよね。カッコーカッコーと楽園みたいなところで朗らかに鳴いている様子が描かれています。天真爛漫なかっこう。
それにひきかえこの「悲しい鳥」はどうでしょう。一体何が悲しくて、悲嘆に暮れているのでしょうか?そもそも鳥に悲しさはない。弾いているうちにこちらがなんとも言えず悲しい気持ちに落ち込んでくる。そして落ち込んでいく暗闇がなんとも心地よい。そういう自虐的な快感に酔いしれる曲です。
卒業以来,この曲は久しく弾いていませんが,若かりし頃の自分の演奏を聴き,未来ある希望に満ちた時代にどうしてこの曲を選んだのか不思議に思うことがあります。